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最後の野生型ポリオウイルスを超えて

最後の野生型ポリオウイルスを超えて:ポリオのない世界を恒久的に実現するために、cVDPVの伝播の阻止が必要な理由

ウリシュミン・サバウヌ先生(LIAISON シニア・アドバイザー)

10月24日:2026年世界ポリオデー

歴史的な成果と、未完の課題

世界は、ポリオの根絶にかつてないほど近づいています。野生型ポリオウイルス2型(WPV2)は2015年に、3型(WPV3)は2019年に、それぞれ根絶が認定されました。現在、残存する野生型ポリオウイルス1型(WPV1)は、アフガニスタンとパキスタンの2か国に残っています。[1–3] これらの成果は、根絶が可能であることを証明しています。

しかし、根絶の最終段階へ進むにつれ、新たな課題が浮き彫りとなりました。循環型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)です。cVDPVは、弱毒化された経口ポリオワクチン(OPV)に含まれるウイルスに由来します。集団免疫が不十分な地域では、このワクチン由来ウイルスが人々の間で伝播を続けて遺伝的に進化し、伝播が長期化に伴い神経病原性と伝播力を再び獲得することで、麻痺や持続的な伝播を引き起こすリスクが生じます。[4,5]

したがって、野生型ポリオウイルスとワクチン由来ポリオウイルスの区別は生物学的には重要であるものの、それによって公衆衛生上の根本的な目標が見失われてはなりません。その目標とは、いかなる地域・集団においても、ポリオウイルスの持続的な伝播を完全に阻止することです。

©UNICEF (Global Polio Eradication Initiative, World Polio Day 2026)

起源は異なっても、公衆衛生上の帰結は同じ

野生型ポリオウイルスとcVDPVは、進化上の起源こそ異なりますが、公衆衛生上の影響や帰結は驚くほど共通しています。いずれも主に糞口経路で感染が広がり、潜伏・無症状のまま蔓延し、急性弛緩性麻痺(AFP)や死をもたらし、容易に国境を越えて広がる潜在性を有しています。そのため、両者ともに綿密なサーベイランス、高い集団免疫の維持、そして迅速なアウトブレイク(集団発生)対応が不可欠です。

麻痺を発症した子どもにとって、ウイルスの起源が野生型かワクチン由来かは、臨床的な転帰を何ら左右しません。だからこそ、根絶の成功に向けた最終的な定義は、「最後の野生型ポリオウイルスを根絶すること」よりも一層広範なものでなければなりません。

ポリオのない世界が恒久的に実現した状態とは、あらゆるポリオウイルスの持続的な伝播が断ち切られ、再流行の条件が効果的に抑えられている状態を指すべきなのです。

アフリカと、新たに浮上したcVDPVの課題

現在の疫学的状況を踏まえると、アフリカはこの最終段階において中心的な役割を果たしています。私たちが世界ポリオ根絶推進計画(GPEI)のデータ(2024年1月1日から2026年8月17日まで)を分析したところ、cVDPV1の検出または集団発生を報告した9カ国のうち8カ国がアフリカの国でした。また、cVDPV2では影響を受けた46カ国のうち34カ国が、cVDPV3を報告した6カ国中5カ国がアフリカ諸国でした。さらに、cVDPV1とcVDPV2が同時に伝播していた6カ国中5カ国、cVDPV2とcVDPV3が同時に伝播していた5カ国のすべてがアフリカ諸国でした。

ただし、これらのデータはcVDPVが単に「アフリカ固有の問題」であることを意味するものではありません。ポリオウイルスは、人々の移動、避難、交易、人道支援の経路を通じて容易に国境を越えます。WHOの最近の評価でも、国や地域をまたぐ複数のcVDPV流入事例を含め、国境を越えた伝播が依然として続いていることが確認されています。[6,7]

重要なのは、cVDPVが低・中所得国だけの問題ではないという点です。2022年には、英国、米国、イスラエルの下水から遺伝的に関連するcVDPV2が検出され、その中にはニューヨークで報告された、ワクチン未接種の成人の麻痺を伴うcVDPV2症例も含まれていました。カナダでも、2022年8月にモントリオールで採取された2つの下水検体からワクチン由来ポリオウイルスが検出されています。さらに2024年後半には、ナイジェリア由来株と遺伝的に関連するcVDPV2が、スペイン、ポーランド、ドイツ、英国、フィンランドの下水から検出されました。[12–14] これらの事例は、定期予防接種率が高い国々であってもポリオウイルスの流入や検出が起こりうることを示しており、こうした国々も引き続き世界的なポリオ根絶の取り組みの一翼を担っていることを物語っています。

アフリカは現在の疫学的最前線ですが、cVDPVは紛れもなく世界全体で立ち向かうべき問題です。

歴史が示す警告

2型ポリオウイルスの歴史は、とりわけ多くの教訓を与えてくれます。WPV2は1999年を最後に検出されず、その後正式に根絶が認定されました。しかしその後cVDPV2が出現し、WPV2根絶後の時代において、ワクチン由来ポリオウイルス対策の中で最大の課題となりました。

ナイジェリア北部では、2000年代半ばに始まった大規模なcVDPV2の集団発生で数百例の症例が発生し、複数の独立した出現事象が確認されました。なかでもある主要な系統は、免疫が不十分な集団の中で6年以上も伝播し続けました。[8,9]

3型の経験も、もう1つの重大な警鐘となっています。WPV3は2019年に根絶が認定されましたが、その後、アフリカ諸国を含む地域でcVDPV3の集団発生が起きています。[3,6]

これらの歴史的経験は、根絶の最終段階における極めて重要な原則を示しています。

  • 野生型ポリオウイルスのある血清型を根絶しても、その血清型に関連する疫学的リスクがすべて自動的に消滅するわけではありません。

  • 野生型ウイルスの根絶と、ワクチン由来ウイルスの伝播の遮断は、密接に関連しつつも別個のマイルストーンです。

根絶に向けたより広い展望

したがって、ポリオ根絶の最終段階には、相互に関連する3つの不可欠な目標が必要です。

  • 残存するWPV1の伝播を完全に遮断すること

  • 発生地域を問わず、cVDPV1、cVDPV2、およびcVDPV3の伝播を遮断すること

  • 再出現を防ぐため、十分な集団免疫とサーベイランス能力を維持・強化すること

GPEIの戦略は、cVDPVの制御を最終段階の不可欠な要素と位置づけています。現行の戦略延長版でも、WPV1根絶に向けた前進を維持しながら、cVDPV2の集団発生を阻止することの重要性が強調されています。[10]

より長期的には、グローバル・プログラムとして適切な安全対策を講じたうえで、生の経口ポリオワクチン(OPV)の使用からの完全な移行を完了しなければなりません。その間も、強力な定期予防接種、サーベイランス、および集団発生対応の体制を堅持する必要があります。[10,11]

つまり、ポリオの終息は、検査結果上で最後の野生型ポリオウイルスが消滅したことだけで達成されるものではありません。最終的には、持続的な伝播を遮断し、ポリオウイルスの再出現を防ぐために必要な生物学的・プログラム的条件と、プログラム上の条件を確立・維持することを意味するのです。

©UNICEF (Global Polio Eradication Initiative, World Polio Day 2026)

世界的な連帯を必要とする世界的な課題

ポリオ根絶は、地球規模の集団行動が求められる課題です。伝播リスクが最も高い国々は、紛争、国内避難民の発生、人道上の緊急事態、脆弱な定期予防接種体制、そして子どもたちへのワクチン投与の困難さといった課題にも、しばしば直面しています。

一方で、ポリオウイルスの伝播を排除したとされる国々も、外部からの流入に対しては依然として脆弱です。アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米、中東の各国でcVDPVが検出されているという事実は、世界のリスクが相互に緊密に連結していることを示しています。[6,12–14]

だからこそ、ポリオ根絶を「高リスク国」と「安全な国」に分断して考えることはできません。リスクの度合いは異なっても、「世界的な完全根絶」という最終目標は共通です。

したがって、ドナー支援国や各国政府にとって、cVDPV対策への投資は、WPV1根絶と競合するものではなく、根絶を完遂するための不可欠な構成要素と捉えるべきです。

持続的な資金提供が必要なのは、緊急の予防接種キャンペーンだけではありません。根絶を根底から支えるインフラにも必要です。具体的には、定期予防接種の強化、環境サーベイランスと急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランス、ラボ検査体制、ゲノム解析、ワクチン供給ロジスティクス、国境を越えた外交的・技術的連携、地域社会の参画、並びに迅速なアウトブレイク対応などです。

世界ポリオデーにあたっての、連帯の呼びかけ

2026年の世界ポリオデーは、次のシンプルな決意を新たにする機会とすべきです。

「野生型ポリオウイルスがなくなっても、cVDPVの伝播が続いている世界は、まだポリオのない世界ではない」

根絶の最終段階では、最後の野生型ポリオウイルスの先まで見据えて行動する必要があります。国際社会には、WPV1の伝播を遮断し、現在も続いているcVDPVの伝播を止め、高い集団免疫を維持し、ポリオウイルスの再出現と国際的な拡散を防ぐことが求められます。

したがって、私たちの目指すべき目標は明確です。

  • WPV1を根絶し、cVDPV1、cVDPV2、cVDPV3の伝播を根絶・遮断し、再出現を防ぐことで、ポリオのない世界を恒久的に維持すること。

  • あらゆる形態の持続的なポリオウイルスの伝播が止まるまで、持続的な政治的コミットメント、予測可能な資金調達、質の高いサーベイランス、強力な定期予防接種、科学的イノベーション、そして世界的な連帯を維持・強化すること。

私たちは、野生型ポリオウイルスとの闘いを終わらせるだけでは不十分です。ポリオウイルスそのものとの闘いを完全に終わらせなければなりません。

参考文献

  1. World Health Organization (WHO). Poliomyelitis. WHO Questions and Answers. Updated 2025.
    https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/poliomyelitis

  2. Global Polio Eradication Initiative (GPEI). Global eradication of wild poliovirus type 2 declared. 2015.
    https://polioeradication.org/news/global-eradication-of-wild-poliovirus-type-2-declared/

  3. Global Polio Eradication Initiative (GPEI). Two out of three wild poliovirus strains eradicated: global eradication of wild poliovirus type 3 declared. 24 October 2019.
    https://polioeradication.org/news/two-out-of-three-wild-poliovirus-strains-eradicated/

  4. Bigouette JP, Wilkinson AL, Tallis G, Burns CC, Wassilak SGF, Vertefeuille JF. Progress Toward Polio Eradication—Worldwide, January 2019–June 2021. MMWR Morbidity and Mortality Weekly Report. 2021;70(34):1129–1135. doi:10.15585/mmwr.mm7034a1.

  5. Mbaeyi C, Baig S, Khan Z, et al. Progress Toward Poliomyelitis Eradication—Pakistan, January 2020–July 2021. MMWR Morbidity and Mortality Weekly Report. 2021;70(39):1359–1364. doi:10.15585/mmwr.mm7039a1.

  6. World Health Organization (WHO). Statement of the Forty-Fifth Meeting of the Polio IHR Emergency Committee. 25 August 2026.
    https://www.who.int/news/item/25-08-2026-statement-of-the-forty-fifth-meeting-of-the-polio-ihr-emergency-committee

  7. Global Polio Eradication Initiative (GPEI). Polio This Week: Country Updates. September 2026.
    https://polioeradication.org/about-polio/polio-this-week/

  8. Wassilak SG, Pate MA, Wannemuehler K, et al. Outbreak of Type 2 Vaccine-Derived Poliovirus in Nigeria: Emergence and Widespread Circulation in an Underimmunized Population. The Journal of Infectious Diseases. 2011;203(7):898–909. doi:10.1093/infdis/jiq140.

  9. Burns CC, Shaw J, Jorba J, et al. Multiple Independent Emergences of Type 2 Vaccine-Derived Polioviruses during a Large Outbreak in Northern Nigeria. Journal of Virology. 2013;87(9):4907–4922. doi:10.1128/JVI.02954-12.

  10. Global Polio Eradication Initiative (GPEI). Polio Eradication Strategy 2022–2026: Delivering on a Promise—Strategy Extension to 2029. World Health Organization; 2025.
    https://www.who.int/publications/i/item/9789240109506

  11. Global Commission for the Certification of Poliomyelitis Eradication (GCC). Report of the Twenty-Fourth Meeting of the Global Commission for Certification of Poliomyelitis Eradication. 2023/2024.
    https://polioeradication.org/

  12. World Health Organization (WHO). Statement of the Thirty-Fourth Meeting of the Polio IHR Emergency Committee. 2 February 2023.
    https://www.who.int/news/item/02-02-2023-statement-of-the-thirty-fourth-polio-ihr-emergency-committee

  13. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Notes from the Field: Detection of Vaccine-Derived Poliovirus Type 2 in Wastewater—Five European Countries, September–December 2024. MMWR Morbidity and Mortality Weekly Report. 2025;74.
    https://www.cdc.gov/mmwr/

  14. Public Health Agency of Canada (PHAC). Vaccine-derived poliovirus detected in wastewater samples in Montreal, Quebec. 23 December 2022.
    https://www.canada.ca/en/public-health/news/2022/12/vaccine-derived-poliovirus-detected-in-wastewater-samples-in-montreal-quebec.html